2002年4月2日火曜日

2002年度「リスクの誘惑」

■2002年度 総合講座 「リスクの誘惑」

コーディネーター :
坂本 光 (助教授: 英文学)
巽孝之 (教授: 米文学)
宮坂敬造(教授: 人間科学)
岡田光弘(教授: 哲学)
坂上貴之(教授: 心理学)

■講義要綱
21 世紀の幕開けと同時に、私たちを取り巻く世界は今後の激しい流動を予感させる事件に直面した。これまでも何回となく再生と解体を繰り返しつつも、再び世紀末を前に新たな装いで語られた「ユートピアの期限」をめぐる言説の向こうに、そして必然や信念で厳重に武装するものの、確信にまでは決して到達できない(という確信だけはある)「幸福の逆説」に居座られた私たちの日常の向こうに、この流動性の予感は渦を巻き、そして私たちを睥睨している。この予感は落ち着きどころを求める不安となって、絶対者の癒しの中に収斂するかもしれない。あるいはまた、この予感は新しい秩序の樹立を求め、勘違いと間違いだらけの安全装置の重層化へと突き進むのかもしれない。これらはいずれも間違いなく「リスクの誘惑」である。

さて、リスクと言う言葉には2つの意味がある。1つは日常よく用いられる危険もしくは不利な事態そのもの、あるいはこうした事態に陥ることをいう。そしてもう1つはあるタイプの不確実性を表わす。その他の不確実性、すなわち無知性、曖昧性をも射程に入れた不確実性相対を、危険で不利な事態で味付けしつつ、賞味するのが本講義の目的である。

過去の形式に従い、今年度のこのオムニバス授業においても多数の塾内外の講師をお呼びする。参加者は自分の言説を構築する取材者として毎時間出席し、関連の参考資料に目を通すことが求められる。本講義が、諸君のよき「リスクの誘惑」たらんことを。

■講義日程
04/09 コーディネーターによるガイダンス
04/16 樽井正義(文学部: 倫理学)
   「リスクと危機と課題 (Risk, Crisis and Task)」
04/23 【開校記念日】
05/07 向山貴彦(作家)
   「1/60秒の永遠—格闘ゲームという架空の戦場」★西校舎ホール518
05/14 藤田弘夫(文学部: 社会学)
   「都市の時間的秩序とリスク」
05/21 村上研一(東京消防庁 )
   「消防隊の指導要領—消防活動とその意思決定手順」
05/28 高宮利行(文学部: 英文学)
   「HUMIプロジェクトの海外遠征のリスクと成果」
06/04 巽孝之(コーディネーター)
   「リンカーンの銃弾」
06/11 山野浩一(作家、競馬評論家)
   「リスクの認識・ギャンブルの試行」
06/18 広田すみれ(東京女学館大学: 社会心理学)
   「心理学から見るリスク・コントロール」
06/25 岡田光弘(コーディネーター)
   「ロジック破綻の危機と魅力」
07/02 足立典子 (商学部:表象文化論)
   「リスクの誘惑・殺戮の表象−everybody needs somebody to love」
07/09 坂上貴之 (コーディネーター)
   「不確実な世界に生きる」
10/01 村井純(環境情報学部:コンピュータコミュニケーション、オペレーティングシステム)
   「"Privacy and Security on Internet" −インターネットのプライバシーとセキュティ」
10/08 喜入冬子(マガジンハウス編集者)
   「編集の現場から見た出版の今」
10/15 坂本光(コーディネーター)
   「推理小説の二つのリスク」
10/22 織田輝哉(文学部;人間科学)
   「リスク社会学の展開」
10/29 宮坂敬造(コーディネーター)
   「近代をとおしてうごめく『古層』のディ−プ・プレイ—リスクの誘惑の味蕾と未来のゆくえ」
11/05 武藤浩史(法学部;英文学)
   「過視と不可視のリスクの誘惑—鏡にうつらない吸血鬼とイギリスの19世紀末」
11/12 田中寅彦(将棋棋士、九段)
   「将棋世界からみたリスクの誘惑」
11/19 【午後より三田祭休業】
11/26 【月曜振替日につき休講】
12/03 つかこうへい(劇作家、演出家)
   「物の見方・考え方」
12/10 江畑謙介(軍事評論家)
   「UNKNOWNの誘惑—情報を基本とした軍事における革命と非対称戦」
12/17 田中泯(舞踏家)
   「即興的身体のリスク」
01/07 白波瀬丈一郎 (医学部;精神医学・精神分析)
   「“リスクの誘惑”がもたらすもの—スリルの分析を通して」
01/14 前田富士男 (文学部;美学)
   「没能力disabilityとしての芸術—リスクと近代美術」
01/21 西瀬戸伸子(千葉保護観察所)
   「犯罪者処遇とリスク」