2025年4月7日月曜日

2025年度「人生の扉 I」講義概要

単位:2(半期)

キャンパス:三田

担当教員:粂川 麻里生 / 加藤 有佳織 / 佐川 徹

設置課程・学部:学士 / 文学部

概要
本科目は文学部教授会が認める科目であり、人文学の趣旨てあるとも言える、人間が共同体の中で生きていく際に経験するさまざまな「イニシエーション」について、さまざまな領域の研究者および実践者の講義によって学ぶ。

授業科目の内容・目的・方法・到達目標
 20世紀最大のヨーロッパ文学研究者とされるE.R.クルツィウスによれば、「人文学の本質はイニシエーションである」(『危機に立つドイツ精神』)。すなわち、生誕から成長、成人、成熟、老衰を経て死にいたる人生の中で、それぞれの段階に文化的・社会的・思想的な分節を与え、最終的には人間存在に意味を与えていくものこそ「人文学(Humanismus)」だというのである。たしかに、人間はただ生まれれば「赤ん坊」や「人間」になるのではなく、その都度の文化的分節化の中に置かれていくことで、初めて存在を獲得していく面が大きい。フィリップ・アリエスは『子供の誕生』の中で、フランスで「子供」の概念が確立したのは17世紀であるとした。それまでは「小さな人間」に過ぎなかった年少の存在が、アンシャンレジーム期の産業の変容と経済成長によって保護され養育されるべき「子供」になっていったというのである。そのような考察も含め、「子供」「青少年」から「成人」になっていく時期の学生たちに対して、人文学の様々な領域におけるイニシエーションへの洞察を伝えるとともに、「高齢化」していく社会への視点も交えつつ、文学部での学びを総合的なものにし、「人生の扉」を考えていく講座としたい。

本講座では,多方面の塾内外の有識者を招き,さまざまな社会のさまざまな局面において、どのような「イニシエーション」が行われているのかを多角的に講義していただく。コーディネーターとなる担当教員たちは、それぞれ文学、人類学,心理学の立場から、上述のテーマにアプローチする。さらに、ジャーナリスト,NPO運営者,作家,芸術家,また社会の各領域でさまざまな「人生の扉」に向き合い,社会における問題を解決するべく実践してきた人たちを講師として招く。人々が自分の「人生の扉」をくぐる時に発する多くの生の声を取りあげたり,過去の作家や芸術家の仕事に見られる「人生の扉」を取りあげたり,心身において起こる具体的な出来事について考えたりするなど,他角度から講義・考察することで学生たちの視野と感性を広げてゆきたい。本講座は,学生たちが自分自身の人生を見つめ直す機会となることも重要であるから,ディスカッションをする時間も大切にしていきたい。