単位:2(半期)
キャンパス:三田
担当教員:粂川 麻里生 / 加藤 有佳織 / 佐川 徹
設置課程・学部:学士 / 文学部
概要:
本科目は文学部教授会が認める科目であり、人文学の趣旨てあるとも言える、人間が共同体の中で生きていく際に経験するさまざまな「イニシエーション」について、さまざまな領域の研究者および実践者の講義によって学ぶ。
授業科目の内容・目的・方法・到達目標:
20世紀最大のヨーロッパ文学研究者とされるE.R.クルツィウスによれば、「人文学の本質はイニシエーションである」(『危機に立つドイツ精神』)。すなわち、生誕から成長、成人、成熟、老衰を経て死にいたる人生の中で、それぞれの段階に文化的・社会的・思想的な分節を与え、最終的には人間存在に意味を与えていくものこそ「人文学(Humanismus)」だというのである。たしかに、人間はただ生まれれば「赤ん坊」や「人間」になるのではなく、その都度の文化的分節化の中に置かれていくことで、初めて存在を獲得していく面が大きい。フィリップ・アリエスは『子供の誕生』の中で、フランスで「子供」の概念が確立したのは17世紀であるとした。それまでは「小さな人間」に過ぎなかった年少の存在が、アンシャンレジーム期の産業の変容と経済成長によって保護され養育されるべき「子供」になっていったというのである。そのような考察も含め、「子供」「青少年」から「成人」になっていく時期の学生たちに対して、人文学の様々な領域におけるイニシエーションへの洞察を伝えるとともに、「高齢化」していく社会への視点も交えつつ、文学部での学びを総合的なものにし、「人生の扉」を考えていく講座としたい。